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地形から見る熊野

三石学さん(熊野研究家)

地形から見る熊野

 学生時代に民俗学・地理学を学び、故郷熊野に戻ってからは埋もれた熊野古道を発掘。世界遺産登録の際にはイコモスの説明員を務めました。熊野市の文化財専門委員長などを経て、現在は熊野旅の文化企画代表や海の熊野地名研究会・事務局長などをしています。

 熊野市を巡られる際、まずおすすめしたいのはレンタサイクルの利用です。熊野古道・伊勢路(松本峠など)以外にも市内では鬼ヶ城・獅子岩・花の窟・産田(うぶた)神社などを1日で回れます。

 世界遺産に加え歴史好きの方におすすめしたい場所は楯ヶ崎です。日本書紀で神武天皇が上陸されたとされる所で、漁船での遊覧も楽しめます。
 宿泊では市街地や湯ノ口温泉以外には「世界遺産リゾート」として作られた熊野倶楽部があります。温泉や熊野の食材を生かした食事、熊野古道への送迎やガイド付きツアーなど準備されています。

 さて、紀伊山地を語る際に、是非知っておいていただきたいのがその地形と、宗教や生活との関係です。

 実は1500万年前、この地では三度に渡る火山爆発が起きています。それらにより、先に触れた鬼ヶ城・花の窟やゴトビキ岩(神倉神社:和歌山県・新宮市)、那智の大滝(那智勝浦町)、古座の一枚岩(古座川町)、橋杭岩(串本町)といった奇観が形成されたのです。

 花の窟・ゴトビキ岩といった巨岩はやがて自然信仰の対象となり、わが国を代表する神道の聖地になりました。その後の仏教伝来や修験の影響もあり、那智の滝なども聖地化されて行きました。

 和歌山との県境を流れる熊野川(新宮川)の影響も見逃せません。七里御浜は紀伊山地からの砂利が黒潮に乗って堆積し現在の姿になりました。熊野市域では今も掘り起こせば。川が運んだ小石がどんどん出てきます。

 ついでに言えば、川や海流の関係では紀伊半島と房総半島にはいくつか共通点があります。熊野川と七里御浜に対し、屏風ヶ浦が侵食されて海流で運ばれ作られたのが九十九里浜(海流がそれぞれどちらに流れているかは明白ですね)。また紀伊半島の漁師の次男以下が住み着いたとされるのが房総海岸。(熊野の御師に由来する)鈴木姓や熊野神社の数が多いのも千葉県といった具合です。

三石学
三石学

熊野研究家

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