私は自分のやりたい仕事に就くために、大学を中退しました。その決意をする際に訪れたのが「紀伊山地の霊場と参詣道」です。
　最初は気分転換に海外にでもと考えましたが、紀伊山地が「甦りの地」として歴史上の人物はじめあらゆる人を受け入れてきた場所だと聞き、興味が湧きました。
まず、世界遺産で最も印象的だったのは本宮大社がもともとあった大斎原（おおゆのはら）という場所です。今は川の中洲に森が残っているだけですが、もともとは社殿ふくめて女性の「子宮」の形に配置されていたそうで・・・人々は「そこ」に一旦入り、そして「蘇る」ことになっています。日本人以上に外国人が多く驚きました。

　「パワー・スポット」では古座の一枚岩が圧巻でした。人により感じ方は異なるでしょうが、一度行かれることをおすすめします。私はたもとの河原から石を何個か持って帰り、今でも部屋に飾っているほどです。
次に食べ物です。海産物・梅干し・高野豆腐・吉野葛はじめおいしいものがいっぱいありましたが、特に印象に残ったのは那智勝浦で食べた「鯨の竜田揚げ」です。
　乗物では新宮（和歌山県）と五條（奈良県）を結ぶ「日本一長い路線バス」が忘れられません。１日がかりの行程ですが、お尻が痛くなる前に十津川温泉で途中下車し日帰り入浴と熊野古道（小辺路）歩きを楽しみ、後続のバスに乗りました。とてもほっこりした、忘れられない１日になりました。

　最後に紀伊山地攻略法として私がおすすめしたいのは「有名な温泉をハシゴするようなコースを組む」ということです。那智勝浦・白浜・川湯・高野などに宿泊しましたが、私のイチオシは奈良県・天川村にある洞川（どろがわ）温泉。もともとは修験者のための場所ですが、内部を若い人むけにリニューアルした宿もあり、とても快適でした。

　霊気あふれる紀伊山地はまた、自然や食や温泉に恵まれた、純粋に素敵な旅先でもあります。日数をかけじっくり訪れれば（ある意味では海外旅行以上に）、それぞれの人生を「リセット」できるのではないでしょうか？